狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
✿ショートストーリー☆キュリオの願望?そのXLⅠ
『やれやれ…』
『…愛する女性にこのような仕打ちを与えるようでは…キュリオもまだまだだね』
どこからともなく響いた…優しく、全てを包み込むようなあたたかな声。
「…誰…?」
思わず天蓋ベッドの天井を仰いだアオイと…
「…この声は…まさか…」
バスローブの腰紐で彼女の手首を縛り上げようとしていたキュリオは…ふとその手を止めた。彼の反応を見るからに、声の主に心当たりがあるようだった。
『…仕置きを受けるのは…お前のほうだよ』
わずかに鋭さを増したその声が途切れると、グニャリと視界が暗転し…
以前、望まぬ争いにアオイが発動した"夢を捻じ曲げる"という至難の業が…今まさに再現されようとしている。
「…っ!?」
(…飲まれる…っ…お父様!!)
そんな事はまったく記憶にないアオイは戸惑い、急激に沈みゆく意識を抱え…彼女は背後にいるキュリオを見失わぬよう、必死にそのぬくもりと声を体に刻み込んだのだった―――。