狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
✿ショートストーリー☆キュリオの願望?そのXLⅤ
「はっ!失礼いたします!!」
キュリオは小さいにも関わらず、軽々と扉を開き、中に足を踏み入れてゆく。
「まぁっ!お父様すごい…私はこのくらいの時、まだひとりで扉は開けられませんでした」
感心したアオイはキュリオの頭を撫で、思わず顔をほころばせてしまった。
すると…
「…な、何をするっ!?」
アオイに頭を撫でられ、驚いたキュリオがその小さな腕を緩めてしまったのだ。
支えを失った重厚な扉がそれ相応の風圧を纏い、こちら側に戻ってくる。
「きゃっ…」
―――バターンッ!!
間一髪、扉に背を打ち付ける寸前…彼女の体を大きな腕が室内へと引き寄せた。
「…大丈夫かい?」
「は、はい…ありがとうございま…」
頭上から降ってきた優しい声に顔を上げたアオイの視界に飛び込んできたのは…
「…っお父様…?あ、あれ?」
銀髪のキュリオそっくりな人物がアオイの背を支え、心配そうにこちらの顔を覗き込んでいる。
「まったく…男なら誰でも"お父様"なのか?お前は…」
嫌味とも聞こえる子供の声がアオイの胸にチクリと突き刺さる。
「あ…ごめんなさい、私記憶が混同しているみたいで…」
アオイはキュリオと瓜二つな青年の腕から逃れ、距離をとると…
「セシエル様、ご無礼誠に申し訳ございません。この者はどうも記憶が曖昧のようで…目覚めたら私の隣で眠っていたのです」
「ふむ…君のベッドで?」
ビクリと肩を震わせたアオイの元に、"セシエル様"の視線が穏やかに降り注いだ。
「はい。…私はてっきりセシエル様に仕える者の一人かと…しかし、先程から訳のわからぬ事を…」
「どんな事をかな?…っと…」
問い詰めるというよりも、興味津々といった様子で"セシエル様"がにこやかに手を差し伸べてくれる。
「…話は立ってするものではないね。お嬢さん、こちらへどうぞ」
繊細で長い指先がアオイの手を軽くとると、銀縁の美しいソファへと優しく導いてくれる。
("セシエル様"…彼の手に触れていると、とても安心する…。それに…なんて優しいオーラなの…)
彼からあふれ出る光が指を伝ってアオイの中に流れ込んでくるのがわかる。そしてそれはアオイの知るキュリオのものとよく似ていて…
(もしかしてこの方は…)