狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
✿ショートストーリー☆キュリオの願望?そのLⅠ
「ふふっ」
彼の言葉を聞いたアオイは小さく笑い、笑顔で答えた。
「セシエル様、お優しいですね。私がお城で肩身が狭くならないよう気を使ってくださっているのでしょう?」
彼の心使いに感謝しながらも、アオイはセシエルの言葉の意味を深く考えていない。すると…
「…どういえば伝わるのかな…」
考えるように折り曲げた指を顎に添わせたセシエル。そしてそんな仕草を見たアオイは
(まるでお父様を見ているみたい…考える時の素振りはセシエル様譲りなのね)
懐かしい風景を間の辺りにした彼女が微笑むと、顔を上げたセシエルが真剣なまなざしで口を開いた。
「…もし君が幼いキュリオに必要な人だったとしても、私が気に入らなければ…城に立ち入った事さえ罰していたかもしれない。こう見えて私は結構厳しいからね」
「…?それって…」
「優しさと甘さをはき違えてはならない。それは私が一番気を付けていることでもある。だが…例外があることを今さっき知ったところさ」
(…優しさと甘さの違い…)
―――ズキン…
なぜか痛んだアオイの心。
さらにセシエルの言葉は続く。
「…どうやら私は惹かれた女性には甘いようだ。そしてこれは…自分ではどうすることも出来ない感情らしい」
照れたように頬を染める彼はどこか幸せそうで、まさにそれはセシエルという完璧で欲(色)を持たぬ一人の人生へ初めて至福の色が注された瞬間であった―――。