狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】

✿ショートストーリー☆キュリオの願望?そのLⅢ


「あ…申し訳ありません私ったら…。でも、深く考えないでくださいね?今すぐ死ぬわけではないのですから」


「……」


笑って答えたアオイを見て、セシエルは無言を貫く。


「…セシエル様?」


瞬きもせず、じっとこちらを見つめている悠久の王にアオイは不安になり顔を声をかけた。


「…そのような事、万が一にも考えたくはないのだが…君の頼みというのなら答えないわけにはいかないね」


「ごめんなさい…私の我儘で…」


(…彼女は自分が先に死ぬと言っていた…だから残された者の痛みがどういうものなのか…父親同様、自分に心を寄せている私に聞いておきたいのだろう…)


「辛いどころではないさ…」


セシエルは深く澄んだ空を見上げ、悲しげにその美しい瞳を揺らしている。


「しかし、私だったら…
遠い未来の再会を信じて、最後のその時まで君の笑顔と瞳を記憶に焼き付けておきたいと願い…抱きしめているだろうね」


「…遠い未来の再会を信じて…?」


「あぁ、そうでもしなければ…悲しみに押しつぶされてしまうかもしれない。希望を持たなければ人は生きていけないからね…」


「…すべての始まりには終わりがある。だが、そんな言葉では片付けられないのが人の想いというものなのだろうな…」


(なにかに縋(すが)りたいという気持ちはセシエル様も同じなんだ…ううん、縋るという言葉はきっと正しくない…それが希望…)


「私のこのような考えは…願望になってしまうのかもしれないね。それこそただのわがまま。来世の君をすでにどうにかしようと考えるなんて…王として有るまじき事だ」


セシエルは自分を責めるような言葉を発したが、アオイは笑いながら答えた。



「いいえ、お父様も同じような事をおっしゃっていたので…なんだか少し安心しました。それに…来世の事まで…こんなに愛していただけているなんて私は幸せ者ですね」



「…それは"お父様"に向けた言葉かい?それとも…私に言ってくれていると喜んで良いのだろうか?」



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