狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
Ⅵ―ⅳ 執務室へ
途中、キュリオが赤ん坊を連れている姿を見かけた女官や侍女がミルクや彼女の服を手にして追いかけてくる。それからすぐ下の階の執務室へと入っていくキュリオと赤ん坊に大臣・女官・侍女たち。
「この子の着替えを頼む」
入室した女官のひとりに幼子を預けると、キュリオは大きな窓の傍にある彫刻の綺麗な真っ白なデスクへと腰を下ろした。そして引き出しの中から上質な紙を数枚取り出すと、手によく馴染んだ羽ペンの先にインクをつける。
癖のない美しい文字をさらさらと書き連ねていくキュリオ。
ふと彼は何か思い出したように顔をあげた。
(あの子の特徴も記さねば伝わらないだろうな…)
キュリオは着替えさせられている彼女の姿をジッと観察してみる。