狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
✿ショートストーリー☆キュリオの願望?そのLⅥ
『この物語は…幸せ探しの旅にでた女の子の話だね。アオイはこの話が好きかい?』
『はいっ!』
目を輝かせてキュリオの膝に座った小さなアオイ。
すると、キュリオが腕を広げて愛しい娘の体を包むように本を広げる。
『もう何度目かな?この物語を読むようせがまれたのは…』
背後の父親を振り返ったアオイは真ん丸な瞳をキラキラさせて指折り数えている。
『んと…ごじゅっかいめ?』
『ふふっそんなに?』
(アオイがこの物語を好きなのなら…主人公くらいの年齢になったら、共に旅してみるのもいいな)
『それで…アオイはこの子の最後に何を感じた?私は途中で出会った王子と結ばれて幸せになるラストが望ましいと思ったのだが…』
(…この物語はとても奥が深い。幸せになるために旅にでた少女は、その道中で"自分の幸せとは愛する人々が幸せになる事"だと気づき、女性としての幸せを選ばず…一生をかけて他人のために力を尽くすことを選んだ少女の物語だ)
『…みんなのえがお、アオイも好き。この子きっと幸せ』
『お前は本当に優しい子だね。アオイがこの子で、私が王子だったら…無理にでも君を連れ去っていたかもしれない。立場がどうであれ、人々に尽くすことは可能なはずだ』
『……』
パチクリと瞳を瞬かせた彼女は開かれた絵本へと視線を落とし、ページをめくり始めた。すると、人々の為…たった一人でまた旅にでた少女の後姿が描かれているラストの場面で動きをとめた。
『…心が皆のところにあっても?』
『いや…自分の幸せは自分で見つけるものだ。彼女が自分の幸せを投げ出す必要はないんだよ』
『……』
そう言われても尚、素直に頷けなかった自分がいたのは驚きだった。
(お父様のおっしゃる事に反発するわけではないけれど…)
(でも…私はやっぱりこの主人公の生き方が好き。今の小さなお父様は何ておっしゃるかしら…)