狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
✿ショートストーリー☆キュリオの願望?そのLXⅦ
「女子(おなご)を笑顔にする魔法…ですか?」
やや小太りで、人の好さそうな中年の魔導師が目を見開きながら目の前の少年に問いかけた。
「…そうだ。何度も言わせるなっ!」
「も、申し訳ございませんキュリオ様…っ…」
キッとこちらを睨んだ幼いキュリオに魔導師の彼は圧倒され、一歩…二歩と後ずさりする。
彼なりに思い悩んだ結果、幼いキュリオが行き着いた先がここである。
「しかしですなぁ…なぜその女子(おなご)が笑顔を失っているのかにもよりますし…」
「…あるのかないのかと私は聞いている」
「えぇ…、あります、ありますとも!」
急かされた魔導師の男は両手を振って幼い彼をなだめながら魔導書を取りに走った。
魔導師たちの集うこの塔で学ぶ事など、もはやキュリオにはないはずだった。それほど彼の魔導の力は強く、神がかりなものだと言える。
暗がりの中、火を灯した燭台に顔を照らされ、息を弾ませながら戻ってきた男。
「…お待たせいたしましたっ…キュリオ様。…こちらはいかがでしょう?」
開かれた魔導書を覗き込んだキュリオ。
「……」
そこには至ってシンプルな陣が描かれており、所々にある花びらの印が可愛らしい…初心者向けの魔術であることが容易にみてとれた。
(こんな簡単なものであいつは喜ぶのだろうか…)
キュリオの脳裏に浮かんだのは寂しそうに俯くアオイの横顔―――。
「…もっと複雑なもので構わぬ。他にないのか?」
おそらくこの少年は簡易な陣を見てこの魔術の価値を判断したのだろう、と悟った男は笑顔でこう答えた。
「何があったのかは存じ上げませんが、魔術も言葉も…飾れば良いというものではありませんぞ?小さな魔法ひとつに、心のこもった言葉を添えれば…」
「…随分知ったような口を利くではないか」
「はーっはっはっはっ!!わたくしめにもキュリオ様に勝っておりますものがひとつだけございますっ!!」
急に胸を張って声を上げた魔導師の彼にキュリオの冷やかな視線が浴びせられる。
「…貴公の恋愛話など興味はないぞ」
「そう言って下さいますなっ!!あ…先程の言葉、少々訂正がございます!」
「…言ってみろ」
「魔術も言葉も飾れば良いというものではないと言いましたが、女子(おなご)によりますなっ!!」
「どういう意味だ?」
不機嫌そうに眉をピクリと動かしたキュリオに男は身を乗り出して熱弁し始める。
「宝石やら化粧やら派手な装飾で着飾っている女子(おなご)には、この魔術は向いておりませぬっっ!!」
「…アオイはそのような女子(おなご)ではない。やはりこの陣でいい…邪魔したな」
魔導書を手にしたキュリオはスタスタと脇目も振らず部屋を出ていく。
「…えっ!?ちょっ!ちょっとお待ちくださいキュリオさまぁあああっっ!!」
自慢話を遮られ、廊下にまでこだました悲痛な男の叫び。
「…小さな魔法ひとつに、心のこもった言葉…か」
賢いキュリオは要点だけを押さえ、歩きながら簡易な魔方陣を見つめている。
ほとんどの魔術をマスターしてしまったキュリオでさえ、必要な術、不必要な術の区別はついていたはずだった。
しかし…予想外のことが起きてしまった。
「この手のものには縁がないと思っていたが…不思議な事もあるものだな…」
やや小太りで、人の好さそうな中年の魔導師が目を見開きながら目の前の少年に問いかけた。
「…そうだ。何度も言わせるなっ!」
「も、申し訳ございませんキュリオ様…っ…」
キッとこちらを睨んだ幼いキュリオに魔導師の彼は圧倒され、一歩…二歩と後ずさりする。
彼なりに思い悩んだ結果、幼いキュリオが行き着いた先がここである。
「しかしですなぁ…なぜその女子(おなご)が笑顔を失っているのかにもよりますし…」
「…あるのかないのかと私は聞いている」
「えぇ…、あります、ありますとも!」
急かされた魔導師の男は両手を振って幼い彼をなだめながら魔導書を取りに走った。
魔導師たちの集うこの塔で学ぶ事など、もはやキュリオにはないはずだった。それほど彼の魔導の力は強く、神がかりなものだと言える。
暗がりの中、火を灯した燭台に顔を照らされ、息を弾ませながら戻ってきた男。
「…お待たせいたしましたっ…キュリオ様。…こちらはいかがでしょう?」
開かれた魔導書を覗き込んだキュリオ。
「……」
そこには至ってシンプルな陣が描かれており、所々にある花びらの印が可愛らしい…初心者向けの魔術であることが容易にみてとれた。
(こんな簡単なものであいつは喜ぶのだろうか…)
キュリオの脳裏に浮かんだのは寂しそうに俯くアオイの横顔―――。
「…もっと複雑なもので構わぬ。他にないのか?」
おそらくこの少年は簡易な陣を見てこの魔術の価値を判断したのだろう、と悟った男は笑顔でこう答えた。
「何があったのかは存じ上げませんが、魔術も言葉も…飾れば良いというものではありませんぞ?小さな魔法ひとつに、心のこもった言葉を添えれば…」
「…随分知ったような口を利くではないか」
「はーっはっはっはっ!!わたくしめにもキュリオ様に勝っておりますものがひとつだけございますっ!!」
急に胸を張って声を上げた魔導師の彼にキュリオの冷やかな視線が浴びせられる。
「…貴公の恋愛話など興味はないぞ」
「そう言って下さいますなっ!!あ…先程の言葉、少々訂正がございます!」
「…言ってみろ」
「魔術も言葉も飾れば良いというものではないと言いましたが、女子(おなご)によりますなっ!!」
「どういう意味だ?」
不機嫌そうに眉をピクリと動かしたキュリオに男は身を乗り出して熱弁し始める。
「宝石やら化粧やら派手な装飾で着飾っている女子(おなご)には、この魔術は向いておりませぬっっ!!」
「…アオイはそのような女子(おなご)ではない。やはりこの陣でいい…邪魔したな」
魔導書を手にしたキュリオはスタスタと脇目も振らず部屋を出ていく。
「…えっ!?ちょっ!ちょっとお待ちくださいキュリオさまぁあああっっ!!」
自慢話を遮られ、廊下にまでこだました悲痛な男の叫び。
「…小さな魔法ひとつに、心のこもった言葉…か」
賢いキュリオは要点だけを押さえ、歩きながら簡易な魔方陣を見つめている。
ほとんどの魔術をマスターしてしまったキュリオでさえ、必要な術、不必要な術の区別はついていたはずだった。
しかし…予想外のことが起きてしまった。
「この手のものには縁がないと思っていたが…不思議な事もあるものだな…」