狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
✿ショートストーリー☆キュリオの願望?そのLXXⅤ
「…キュリオ様はよくこの場所へ来られるのですか?」
「あぁ、城の中でもひとりになる事は出来るが人の気配が常にあるからな。ここならそんな気配からも邪魔される事がないから好きだ」
「そうなんですね…」
(もしかして未来のお父様も一人になりたくてここへ…悪いことをしてしまったわ…)
「おい、いちいち俯くのはやめろ。その視線の先に私はいないのだぞ」
「そう…ですね」
彼は何も悪くない。懸命に己を奮い立たせ、顔を上げたアオイにようやく安堵のため息をついたキュリオ。しかし、彼女の長い睫毛が不安そうに揺れるたび、彼の胸は呼吸もままならないほど強く締め付けられていく。
(こいつはなぜか…悲しませてはいけない気がする…)
「…話をすすめるぞ。…お前は何をそんなに興奮していた?」
覗きこまれたアオイは彼の瞳と呼吸とを合わせ、少年らしい少し高めの声に耳を傾けていると…不思議と少しずつ心が穏やかになっていくのがわかる。
「キュリオ様…今からする話は軽く聞き流してくださいね」
「…なに?…あぁ、今はお前の童話(フェアリーテイル)に付き合ってやる。そのまま続けろ」
「ありがとうございます。わたし…」
幾分、冷静さを取り戻したアオイは腹をくくり、一呼吸置いた彼女は"もしも…"の話の幕を開いた。
「…未来から来たんです」