狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
✿ショートストーリー☆キュリオの願望?そのLXXⅧ
(言わなきゃ…言わなきゃ伝わらない…)
「それ、は…っ…」
あまりにも残酷で悲しい話をこの小さな少年に知らせるか否か…今さらに迷ってしまったアオイ。
―――ドクンドクン…
拒絶するアオイの思考回路と共に、異音を奏でる心の臓。なるべくその事は伏せて説得したいと思っていた彼女だが…
(自国の民に…命を狙われるかもしれない…私はそんな事からお父様を遠ざけるために説得しに来たのだから…っ!)
「…王様、が……」
「……」
様子のおかしいアオイを見つめたまま無言のキュリオ。
彼女の緊張から、よからぬ事を告げられるのだろうと推測した彼はアオイの言葉を待たず、自らその口火を切った―――。
「王が民に殺される…か?」
「……え…」
耳を疑ったアオイ。不安な気持ちが暴走し、先走った自分が発言してしまったのかと口元を押さえた。
「何を驚いている。その事を言おうとしていたのではないのか?お前は」
あまりにもサラリと言いのけたキュリオに瞬きを繰り返すアオイ。
彼の言葉から、発言したのは自分ではないことを理解し、別の驚きが芽生える。
「そ、その…キュリオ様は…ご存じなのですか…?」
ただカマをかけられているだけかもしれない。頭の良いキュリオの事、初めから知っているふりをして…アオイの心の負担を減らそうとしているだけかもしれないため、慎重になる必要があった。
(やはり知っていたか…)
わずかに眉間に皺を寄せたキュリオ。アオイの反応次第では笑って冗談だと話を終わらせるつもりだったが、彼女の様子を見る限り彼の予感は的中していた。
一枚うわてのキュリオ。そしてその話をしたのはおそらく…
(…セシエル様…なぜ…)
彼は同情を欲するような弱い人間ではない。セシエルはキュリオが最も尊敬する唯一無二の王なのだから―――。