狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
✿ショートストーリー☆キュリオの願望?そのLXXX
「……」
「…愛する人と時間の違いを気にすることなく…幸せになって頂きたいんです」
決して自分とキュリオの事を言ってるのではない。
ただ普通の人々が手に出来る幸せと同じくらいの幸福を彼らにも…と、アオイは願わずにはいられないのだ。
切ない…心からの想いを言葉にのせたアオイ。
そしてわずかに声が震えているのはきっと…
「…それはお前の本心か?」
疑うような視線を向けたキュリオは、アオイの心を探るようにその距離をつめた。
「…もちろんです。私はようやく…ここがお父様の物語の始まりなのだと確信しました」
「それで…?」
「今なら…書き換える事が出来るはずです。キュリオ様の望む未来に…」
「アオイ、お前の童話で私は父親なのだろう?」
「はい…」
「私はてっきりそこで幸せを手に入れたと思っていたのだが…違うのか?」
「…キュリオ様…でも…っ…」
言葉を詰まらせたアオイはわかっている。キュリオが王でなくなれば、もう二度と出会う事がないのだと…。
「…アオイは五百年以上先の未来から来たと言ったな。たかが五百年だ」
キュリオはまるで五日後の話をするように空を見上げ、そっとアオイの手を握りしめた。
「その先に私が求めていたお前という存在があるというのなら…」
「どこにいても必ずお前を見つけてやる。その不安も迷いも…すべて私が引き受ける」
「お前はただ…」
―――安心して生まれて来ればいい…―――