狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
Ⅵ―ⅶ 怯え
「それなら私が実証済みということになるな。
昨晩この子に変化はなかった」
「しかし…騙されているという可能性はございませんか!?奴等はその姿を自由に変えることができると聞きます!もし赤子に化けて我々を油断させているだけだとしたら…っ!」
「何をそんなに怯えている…」
「い、いえ…わたくしは…ただっ…」
怯える大臣の姿に、ふぅ…とため息をついたキュリオは静かに立ちあがり二人の会話に戸惑う女官たちの合間を抜け、大人しくソファに腰をおろしている赤ん坊の前で片膝をついた。
「すまないね…こんなことはしたくはないが…」
何が起きているかわからないようにキュリオの顔をみて穏やかに微笑む赤ん坊。そして彼はその笑顔に胸を痛めながら…腰から短剣を引き抜く。
「キュ、キュリオ様っ!!いくらなんでもこんな小さな子に…っっ!!」
慌てて駆け寄った侍女数人が赤ん坊を守るように立ちふさがった―――