狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】

その2

(…女の子用の服はこれで終わりね)


すると…


「それでは…手が空いた者から食事にしようか」


聞き慣れた美しい声が響き渡る。
と、とたんに手の空いていない生徒たちまでもが作業を放り出し、一目散に声のした方向へと駆けていく。


長テーブルに所狭しと並べられた、からあげやサンドイッチ、個別に取り分けられたカップの中には彩美しくフルーツやサラダが綺麗に盛り付けられている。


「きゃーっ!!!さっすがアラン先生っ!!」


「こんなこと出来るってやっぱり先生はどこかの貴族だと思うんだよねー…」


「ねぇ…すごい量だけど…これっていくらかかってるんだろ…」


副担任のアランによって、このクラスの生徒たちは異常なまでに特別対偶を受けていた。そして、ほとんどの生徒が用意されたフォークを手に舌鼓を打っている中…


「ほらアオイ、休憩しようよ!アラン先生の差し入れなくなっちゃうよ?」


「うん、私もう少しで終わるから。行っておいでよミキ」


ニコリと笑みを浮かべたアオイはすぐに視線を戻すと、新たに手にした男物の衣装の仕上げへと入る。


「んー…頑張るものいいけど、体がもたないよ?前夜祭ではまだ必要ないんだしさ、ゆっくりやろうよ」


「本当に大丈夫だから」


気遣うミキの言葉にも笑って受け流したアオイ。


アオイのペースなら何も急ぐことはない。ろくに無駄口を叩くことなく黙々と作業をすすめていた彼女は他の誰よりも捗っていたからである。


そして明日の前夜祭。朝礼さえ終わってしまえば自由行動になる。学園際の準備をするのもよし、早くから店を出しているクラスに遊びに出かけても良い。


しかしアオイの頑張る理由は他にあった。


(お父様は私が学校に残っているから帰れない…
お城に戻ったら執務がたくさん待っているのに…早く終わらせて解放させてあげなきゃ)


すると今度は…


「…アオイさんの説得は私に一任させていただけますか?」


「ほら、でたっ!アラン先生のお出ましだよ!!」


ニヤリと笑ったミキがいつものようにそそくさと姿を消しにかかった。


「ミキったら…」


生徒たちの前でも特に気にする様子もなく普段通りに接してくるアラン。
それが女子生徒たちの嫉妬心に火を点けている事を彼は知らない。


「…貴方のために用意した食事なのに、お気に召しませんでしたか?プリンセス…」


片膝をつき、アオイの顔を覗きこむアラン。
それもそのはず…


< 632 / 871 >

この作品をシェア

pagetop