狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
Ⅵ―ⅸ 苦渋の決断
―――目を逸らしていた女官が、恐る恐る二人へと視線を戻す…赤子の声は聞こえないが、わずかな血の匂いがする。そして…あたりには静かすぎるほどの静寂―――
少女はキョトンとしている。
私は自分で傷付けた親指から鮮血が流れていくさまをじっと見つめている。
「…血が欲しいかい?何も隠さなくていいんだよ。
もしお前がヴァンパイアだとしても私の血をあげるから」
優しく微笑んだキュリオは片手で彼女の頬をなでながら血に染まった指先を幼子の口元に近づけていく。
「…?」
だが彼女は態度を急変させるどころか、目を丸くしてキュリオを見つめている。やがて…濡れた指先が外気に触れ、血が凝固してしまった。
(血をみて冷静で居られるヴァンパイアはいない…)