狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
その21
「きゃあっ!!」
教室へ向かって歩いていたキュリオ、アオイ、カイの三人は突如姿を現した神剣の大地を揺るがす巨大な波動にその身を激しく揺らしてしまった。
「アオイッ!」
すぐさま隣りで崩れゆく彼女の体を抱きしめたキュリオ。
「ぉわーーーっ!!」
そして何も支えがないカイは派手に尻もちをついてしまった。
「お、お父様…この力って…」
飛び交う悲鳴のなか、感じた事のない巨大な力にアオイの身の毛がよだつ。
「まさか…こんなことが……」
キュリオのアオイを抱きしめる手に力がこもった。そして彼の視線は窓の外で光輝く屋上へと注がれている。
(お父様…?)
まるで心当たりがあるような彼の反応にアオイはわずかに目を見開いた。
「キュリオ様アオイ姫様!早く避難いたしましょう!!建物内にいては危険です!!」
緊急時のため、もはやカイがキュリオをアランと呼んでいないことを咎めることはない。
悲鳴が飛び交う中、あたりを見回せばすでに避難し始めている生徒たちで廊下や階段は人であふれかえっていた。
「…カイ、アオイを連れて中庭へ避難しろ。何があっても彼女から目を離すな」
「え…?キュリオ様は……」
言いかけたカイの言葉を遮り、キュリオはアオイへと言い聞かせる。
「…お前は自分の身を守ることを一番に考えなさい。私が戻るまでカイの傍を離れてはいけないよ」
「…お父様っ…」
ぎゅっと握りしめたキュリオの袖をアオイは離そうとしない。
彼女の心を大きな不安がよぎる。
今までに感じた事のない巨大な力。万が一にも五大国・第一位の王が悠久で力を放出しているはずはないからだ。
「…必ず戻る。お前をひとりにはしないと誓おう」
不安そうに見上げるアオイの額へと触れるだけの口付けを落とすキュリオ。
「頼んだぞ。カイ」
「はっ!命にかえましても必ず!!」
「……」
(私が行っても足手まといになるだけ…)
「お気をつけて…っ…」
瞳を揺らすアオイに頷きながら、キュリオはひとり屋上を目指し走り出した―――。