狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
その22
「…クジョウ」
声を低く呟いたセンスイ。その瞳は己らの足元へと向けられている。
「もう一人はお前に任せる」
「ふふっ…武器も持たない私がキュリオ殿のお相手を?」
口では困った風を装ったセンスイだが、その顔には微塵の焦りも感じない。
「…茶番だな…」
そう答えた漆黒の男は飽きれたようにため息をついた。
「まぁそうおっしゃらないで下さい」
「…これでも私は戦いに向いていないほうなんですから」
己の標的(ターゲット)を近づいてくるもうひとつの気配へと定めながら、一歩下がったセンスイ。
「……」
そして…おもむろに辺りを見回し、屋上を大きく取り囲む手摺(てすり)へと手を翳(かざ)したと思うと…
―――ギギギィ…ッ…ガシャッ!!
鈍い音を立てた金属製の手摺はまるで針金のごとくその身をしならせ、堅く結びついたその端々は無残にも砕け散り、残ったその身が彼の手へと吸い込まれるように引き寄せられていく。
「こんな事ならヤマトのカタナでも借りてくれば良かったですね…」
小さく肩を竦めたセンスイだが、漆黒の男はさほど気にした様子もなく対峙した銀髪の王を睨み続けている。
「そろそろ準備はいいかい?」
そう声をかけ、神剣を手にした"キュリオ"の腕に力がこもる。
「…来るぞ」
「…えぇ」
低く唸ったセンスイは手にした金属の塊を指先で撫でる。
そして彼の指が滑るたびにそれは輝きを増し…二、三度繰り返した頃には全く別の物体へと姿を変えていたのだった―――。
声を低く呟いたセンスイ。その瞳は己らの足元へと向けられている。
「もう一人はお前に任せる」
「ふふっ…武器も持たない私がキュリオ殿のお相手を?」
口では困った風を装ったセンスイだが、その顔には微塵の焦りも感じない。
「…茶番だな…」
そう答えた漆黒の男は飽きれたようにため息をついた。
「まぁそうおっしゃらないで下さい」
「…これでも私は戦いに向いていないほうなんですから」
己の標的(ターゲット)を近づいてくるもうひとつの気配へと定めながら、一歩下がったセンスイ。
「……」
そして…おもむろに辺りを見回し、屋上を大きく取り囲む手摺(てすり)へと手を翳(かざ)したと思うと…
―――ギギギィ…ッ…ガシャッ!!
鈍い音を立てた金属製の手摺はまるで針金のごとくその身をしならせ、堅く結びついたその端々は無残にも砕け散り、残ったその身が彼の手へと吸い込まれるように引き寄せられていく。
「こんな事ならヤマトのカタナでも借りてくれば良かったですね…」
小さく肩を竦めたセンスイだが、漆黒の男はさほど気にした様子もなく対峙した銀髪の王を睨み続けている。
「そろそろ準備はいいかい?」
そう声をかけ、神剣を手にした"キュリオ"の腕に力がこもる。
「…来るぞ」
「…えぇ」
低く唸ったセンスイは手にした金属の塊を指先で撫でる。
そして彼の指が滑るたびにそれは輝きを増し…二、三度繰り返した頃には全く別の物体へと姿を変えていたのだった―――。