狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
Ⅵ―ⅹ 残念な気持ちと…
「…そうか、お前はミルクのほうがいいんだね?」
「きゃぁっ」
すると、ミルクという言葉に反応したのか幼子は嬉しそうな声をあげて足をバタバタさせた。
「ふふっ
試すような事をしてすまない。怖い思いをさせて悪かった…」
キュリオは残念な気持ちと、ほっとした気持ちが交差し複雑な表情をみせる。
(きっとこれでいいんだ…もし彼女がヴァンパイアで長い命があったとしても、周りに恐れられる存在ではあまりにも不憫だ…)
赤子の小さな体を抱き上げ、頬を合せて安らいだ笑顔を向けるキュリオを見た女官が駆け寄ってくる。
「よかった、よかったキュリオ様…っ!
これでこの子が追い出されるようなことはないのですよね!?」
「ああ、君にも心配かけてしまったね」
「い、いえ…っ…!」
そう言葉を返した女官は涙ぐみながら愛おしさを込めた瞳で赤子を見つめている。そして、キッと目をつり上げたかと思うと…
「大臣っっ!!
二度とこの子を傷つけるようなこと言わないでくださいませ!!次はわたくしが許しませんことよっ!!」
「も、申し訳ない…」
女官に叱られた大臣は面目ないといったように肩を落とし小さく謝罪の言葉を呟いた。