狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】

その30

(…やつはどこを狙っている?)


セシエルが放った金色の魔法は確かにクジョウを捉えている。しかし…微妙に的をはずれている感が否めない。


「……っ!!」


はっとしたクジョウが背後を見やると…


「避けろ!センスイッ!!!」


「…さすがセシエル様だ」


キュリオが彼の作戦に気づき、神剣を握る両腕に力を込めると銀の炎が激しく燃え盛る。

…と、バランスを崩したセンスイの体が大きく傾いた。


「下がれ!アレス!!」


「は、はいっ!!」


息をひそめるようにキュリオの背後に立っていた魔導師が主の声に扉の傍まで走る。


「…くっ……」


そしてキュリオに気を取られたセンスイにクジョウの声は届かない。


「センスイッ!!」


剣を握りしめたまま飛び出したクジョウが彼の身を抱え、その場を離れようとした…が、


「…戒(いまし)めの、術だと…?…」


漆黒の男の両足はまるで地に飲み込まれるように沈み、センスイもまた同じように動けない。



「このまま二人仲良く死んでいただこうか」



にやりと笑ったキュリオの術から逃れる事が出来ず、以前の彼が本気を出していなかったのだと気付いた。



「どうやら…少しばかり貴方を見くびっていたようですね…」



キュリオの輝く左手を見たセンスイは苦々しく顔を歪めた。以前、易々とアレスの術を破ったセンスイだが、キュリオの魔法に囚われた体はびくともしない。


「備えろ!センスイ!!」


張りつめたクジョウの声色から非常事態であることはわかる。
それもそのはず、王が放った巨大な灼熱の波が目前に迫っているからだった―――。

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