狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
その41
―――やがて…空になった麻袋を抱えたソウガが、静まり返った建物の中にひとり足を踏み入れる。
「…ん?おーい!誰もいないのかよ!?」
「……」
「ま、いいや。水が先だ!」
誰の返事もないことから彼は麻袋を放り出し、乾いた喉を潤わせようと水瓶へと浸した杓子に口をつけたところでようやく異変に気付く。
「ったく…いるなら返事くらい…」
奥の部屋へと続く扉が薄く開いており、センスイがよく出入りしていたあの部屋の明かりが漏れていたからだ。
身軽な彼の身長は他の誰よりも低い。それもそのはず、ソウガの見目はまだあどけない少年だったからだ。
駆け出したソウガの跳躍には目を見張るものがある。昔からよく木登りや駆けっこをしていたイメージが強く、その姿はまるで春を喜ぶ小動物のような可愛らしさが垣間見える。
(この気配は…ヤマトか?)
冷静に気を読めばわかるのだが、彼の場合その目で確認したほうが速いこともあるため…どうしてもそれが板についていない。
―――ギィ…
「おい!ヤマト!!帰ってるなら…」
とまで言って口を噤(つぐ)んでしまった少年。
「…水鏡に映ってるやつ…センスイ、なのか…?」
ヤマトの向こう側で豹変した彼が瞳をギラつかせながら何かを手にして叫んでいる。
「…この姿になるのは二度目だな。どうやらクジョウでも抑えきれないらしい」
口元に薄い笑みを浮かべたヤマトの瞳が怪しく光る。
こちらを振り返ることなく淡々と話すヤマトの冷静さにソウガの心の臓が警鐘を鳴らす。
「…ん?おーい!誰もいないのかよ!?」
「……」
「ま、いいや。水が先だ!」
誰の返事もないことから彼は麻袋を放り出し、乾いた喉を潤わせようと水瓶へと浸した杓子に口をつけたところでようやく異変に気付く。
「ったく…いるなら返事くらい…」
奥の部屋へと続く扉が薄く開いており、センスイがよく出入りしていたあの部屋の明かりが漏れていたからだ。
身軽な彼の身長は他の誰よりも低い。それもそのはず、ソウガの見目はまだあどけない少年だったからだ。
駆け出したソウガの跳躍には目を見張るものがある。昔からよく木登りや駆けっこをしていたイメージが強く、その姿はまるで春を喜ぶ小動物のような可愛らしさが垣間見える。
(この気配は…ヤマトか?)
冷静に気を読めばわかるのだが、彼の場合その目で確認したほうが速いこともあるため…どうしてもそれが板についていない。
―――ギィ…
「おい!ヤマト!!帰ってるなら…」
とまで言って口を噤(つぐ)んでしまった少年。
「…水鏡に映ってるやつ…センスイ、なのか…?」
ヤマトの向こう側で豹変した彼が瞳をギラつかせながら何かを手にして叫んでいる。
「…この姿になるのは二度目だな。どうやらクジョウでも抑えきれないらしい」
口元に薄い笑みを浮かべたヤマトの瞳が怪しく光る。
こちらを振り返ることなく淡々と話すヤマトの冷静さにソウガの心の臓が警鐘を鳴らす。