狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
Ⅶ―ⅰ 大魔導師・ガーラント
魔術師らしく古びた杖をつき、立派な白い顎鬚と髪、目元には笑い皺が深く刻まれた温和そうな高齢の男が室内へと足を踏み入れた。
「ガーラント精がでるな。いつも書物に囲まれている君がここを訪れるとは…後ろの子が関係しているのかな?」
立ちあがったキュリオは目の前のソファに座る幼子を抱き上げ、ガーラントと呼ばれた彼の元へと足を向けた。
「おや?キュリオ様、いつの間に御子が…」
「いや、先日聖獣の森で見つけた赤ん坊だ。
まだ皆に紹介出来るところまで来ていないんだが、顔合わせくらいならしてもよいかなと思ってね」
にこやかに赤ん坊を見つめるキュリオの表情を見て、ガーラントは目元をほころばせた。
「女神殿たちが一瞬にして心を奪われるキュリオ様の笑顔とは…きっとこのようなお顔の事じゃろなぁ」
すると、少しムッとしたキュリオは怪訝な顔をし年老いた男の顔を睨んだ。