狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】

その５４

すると…軽やかな足音と、ほんの少し気だるげな足音が一方から近づいてきた。


「あっ！お父さまだ！！お母さまを連れてきたよ！！」


幼い少年は少女の手を引いたまま屋上へと戻ってきた。
そして少年は暗がりの奥の人物へと走る。


はっと振り返った一同が目にしたのは…


「アオイ…なぜ…ここに……」


「言いつけを破ってごめんなさいお父様、カイが怪我を…っ…」


蒼白になりながら駆け寄ったキュリオに眉を下げてアオイは謝罪の言葉を口にするが…


「……？」


血生臭い風に違和感を覚えた彼女があたりを見回し、一点を見つめたまま体が震えだす。


「…うそ…あそこに倒れてるのって……」


ﾄﾞｸﾄﾞｸと心の臓が早鐘を打ち、気付いたときには走り出していた。


「アオイッ!!」


キュリオの声も振り切り…駆け出したアオイは一目散にとある人物のもとへ急いだ。


「センスイ先生っ!!」


『…ア、オイさ……』


まさか会えるとは思っていなかった彼の瞳が、驚きからやがて…切なげに細められる。


「…どうして…ひどい怪我…っ…」


『こんなの…ただのかすり傷、です…』


アオイはセンスイが楽になるようにと彼を抱き起し、仰向けにしながら己の胸へと寄りかからせる。