狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】

その56

(やはり彼女の存在がセンスイを狂わせている…)


声をかけても無駄だったセンスイの瞳にはいつもの彼が戻り、幸せそうな笑みまで浮かべ…穏やかにその身を委ねているとはヤマトが驚くのも無理はない。
優しさを持ち合わせながらも決して他人に心を許さない…それが彼だからだ。



「感動的な再開に水を差すようで悪いが…」



ジャリ…



砕けた瓦礫を踏み鳴らし、一歩近づいた男の気配。

慌ただしく己のハンカチでセンスイの胸元を押さえていたアオイがゆっくり顔を上げた。



「…?」



「さようなら"アオイさん"」



『…っ!!ヤマト…やめっ……!!』



制止するセンスイの声も虚しく煌めくカタナを振り上げたヤマト。
それは容赦なく振り下ろされて…



「アオイッッ!!!!」



「アオイさん!!!」




一瞬気を取られたセシエルとキュリオの絶叫がこだまする中、振り返ったアオイの前に血飛沫が舞った―――。


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