狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
その57
(苦しい…息が…できな……)
背中に感じる焼けつくような痛み。徐々に遠のく意識の中で、アオイの視界はゆっくりコマ送りのように流れ始めた。
「…っ……っっっ!!」
失われ行く大量の血液がアオイから聴覚を奪い始め…美しい顔を血と涙に濡らし、泣き叫ぶセンスイの涙がアオイの頬を伝う。
(…セ、ンスイ…先生…泣か、ないで…)
もはや唇を動かす事さえ叶わず、もう…重くなった瞼を開けていることさえ出来ない。
センスイを胸元に抱え、支えていたアオイだが…いつの間にか立場が逆転し、崩れるその体を彼のぬくもりが包んでくれていた。
(…先生、きっと…自分…を責め、て……る……)
(…誰も…悪く、な…い…のに……)
体を動かすことさえ叶わないアオイの体を強く抱きしめ、震える体から彼の心の痛みを感じた…。
「どけっ!!!アオイッ!!!!」
声は聞こえないものの、激しく揺さぶられた体の感覚とわずかな匂いを感じる事は出来た。
(…おと…さま……?)
センスイから奪うように血にまみれたアオイの体を抱き上げるキュリオ。
彼女を失う恐怖からか…その手が小刻みに震えている。
「…アオイ…っ…大丈夫、これは夢なんだっ!!」
「…次に…っ目覚めた時は…いつも二人で迎える…悠久の朝だ…っ…!!」