狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
その70
「ぅ…っん……」
めまいに似た感覚を覚えながら、重くなった瞼を開いていくアオイ。
(…あれ…)
数回瞬きを繰り返すとやがて…見慣れた光景が広がっていく。
(ここ…お父様の部屋?)
(そうだ、私学校を早退してきて…それから……)
靄のかかる意識を辿るが…その先の記憶がどうも結びつかない。
窓の外から覗く夜の帳(とばり)がまるでアオイの記憶を封印する魔法のように心を覆い尽くしている。
(…今までここにいたの?私…)
すると、突然背後からきつく抱きしめられて…
「きゃっ…」
「……」
「…お、お父様?」
己の肩と腹部に回されていた腕に気付いて声をかけるが、待っている優しい気配は反応を示さない。
「……」
「…あの…」
長い沈黙のあと、不安になり振り返ったアオイ。すると…
「…君を、失う…っ夢を見た…っ…」
絞り出すような声を震わせたキュリオにより一層強い力でその身を拘束される。