狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
前夜Ⅰ
―――日付も変わろうという夜も深まった時分―――…
静まり返った悠久の城は、城が自ら放つ淡い光と…足元を照らすために設置された中庭の通路、そして遅い時間に人の出入りのある扉のみに灯りがともされいるのだが…
城の最上階。
国の最高位、王であるキュリオの私室の並びにある部屋のひとつにはまだ灯りが揺らめいて、二つの影を壁にと刻んでいた。
ひとつはせわしなく動く肩幅の広い男のもので、もうひとつは…
「…えっと、着替えにタオル…櫛は明日の朝入れて、あとは…」
「おやつは明日の朝、ジル様が用意してくださるみたいですので姫様はその中からお好きな物をお選びくださいね」
アオイの背後から手元を覗き込んだ剣士のカイが、この日のために新調した真新しいバッグを手に笑いかけた。
「うん、ありがとう。遅くまでごめんね…カイ」
バッグを受け取ったアオイは嬉しそうにそれを肩にかけ、鏡の前で角度を変えながら彼を振り返る。
「見て、すごく素敵なバッグ!あとで皆にお礼言わなきゃね…お土産何がいいかな?」
真っ白でしっかりとした二重の布地に、狭すぎない持ち手の部分。そして何やら蔦のような上品な銀の刺繍が四隅に施されおり、腕を通したアオイの肩周りの邪魔にならぬよう完璧な設計となっている。
おそらくこれは一流の職人…仕立屋(ラプティス)・ロイが仕立てたものに違いなかった。
それというのも…彼女の関する一切の妥協を許さないあのキュリオが手配したものだからだ。
「とてもお似合いですよ姫様。大きめのバッグですからお土産も十分入りましょう」
「うんっ!でも…お城の皆にっていうとすごい数になっちゃいそうだし、宿泊するホテルに頼んで向こうから送るのもありなのかな?」
斜め上を見上げたアオイは学校生活初!となる、二泊三日の小旅行に胸を躍らせている。
静まり返った悠久の城は、城が自ら放つ淡い光と…足元を照らすために設置された中庭の通路、そして遅い時間に人の出入りのある扉のみに灯りがともされいるのだが…
城の最上階。
国の最高位、王であるキュリオの私室の並びにある部屋のひとつにはまだ灯りが揺らめいて、二つの影を壁にと刻んでいた。
ひとつはせわしなく動く肩幅の広い男のもので、もうひとつは…
「…えっと、着替えにタオル…櫛は明日の朝入れて、あとは…」
「おやつは明日の朝、ジル様が用意してくださるみたいですので姫様はその中からお好きな物をお選びくださいね」
アオイの背後から手元を覗き込んだ剣士のカイが、この日のために新調した真新しいバッグを手に笑いかけた。
「うん、ありがとう。遅くまでごめんね…カイ」
バッグを受け取ったアオイは嬉しそうにそれを肩にかけ、鏡の前で角度を変えながら彼を振り返る。
「見て、すごく素敵なバッグ!あとで皆にお礼言わなきゃね…お土産何がいいかな?」
真っ白でしっかりとした二重の布地に、狭すぎない持ち手の部分。そして何やら蔦のような上品な銀の刺繍が四隅に施されおり、腕を通したアオイの肩周りの邪魔にならぬよう完璧な設計となっている。
おそらくこれは一流の職人…仕立屋(ラプティス)・ロイが仕立てたものに違いなかった。
それというのも…彼女の関する一切の妥協を許さないあのキュリオが手配したものだからだ。
「とてもお似合いですよ姫様。大きめのバッグですからお土産も十分入りましょう」
「うんっ!でも…お城の皆にっていうとすごい数になっちゃいそうだし、宿泊するホテルに頼んで向こうから送るのもありなのかな?」
斜め上を見上げたアオイは学校生活初!となる、二泊三日の小旅行に胸を躍らせている。