狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
前夜Ⅱ
「でしたら俺が受け取りに参りましょうか?キュリオ様のお荷物は先に運んで待機している者たちがおりますが、帰りは俺が預かる予定となっておりますので」
「あ、ううん…」
もちろんアオイも同じ事を言われていた。
"アオイのバッグは私の荷物とともに運ぼう。お前に重いものを持たせるなど私は許可しないからね"
今回のことを渋々承諾してくれたキュリオはアオイに条件を出したが…
"お父様…私はいつだって皆と同じがいいです。それに荷物が重くても全然平気です、それだって大切な思い出になると思うから…"
夕食時に手を止めたアオイはいつもの特別扱いを激しく拒んだ。
"アオイ…最近お前は私の出す条件に不満が絶えないようだね。一体何だったら素直に聞いてくれるんだろうね…"
上品な仕草でワイングラスを揺らしたキュリオはため息をつきながら目の前の愛しい娘の困り顔をジッと見つめている。
"ごめんなさい…"
"…謝罪の言葉が聞きたいわけではないよ…別の条件を考えておこう。それは必ず守ってもらう"
"は、はいっ!お父様っ!!"
妥協してくれた父親に感謝しつつ、笑顔で夕食を再開したアオイだった―――。