狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】

前夜Ⅵ

アオイの教育係兼、護衛を兼ねたアレスとカイだが、あまり堅苦しくないカイはアオイと打ち解けるのが他の誰よりも早かった。

キュリオが城を空けた日に寂しがる彼女を連れては共に城の探検へと出かけ、さらにこっそりと夜中に抜け出し、聖獣の森へと足をのばしたこともあった。

それらが手放しに喜ばしいことかどうかと問われると怪しいのだが、究極の過保護であるキュリオに対し、子供らしく走り回る楽しさを教えたのがカイだと言えよう。


そしてこっそり続けられていた夜遊びも、いつしかキュリオの知るところとなり…


明け方にアオイの部屋を出たところに待ち伏せていたのが彼女の父親だった。


"カイ…私の信頼を裏切らないでおくれ"


"…キュリオ様…っ!!"


(や、やばいっ!!ばれた!!)


"も、申し訳ございませんっ!!今度は日の明るいうちに出かけ…っ…"


深々と頭を下げた剣士にキュリオの鋭い視線が突き刺さる。


"…いつも私がその後ろをついて行っていたのも気づかない程遊びに夢中だったのかい?"


"…っ!?…い、いつからですかっ!?"


"…最初からだ。私が気づかないとでも?"


(…そうだっ…!!姫様を愛してやまないキュリオ様の目を欺けるわけがなかった!!)


"アオイの寂しさを紛らわそうと君がそうした事は私も理解している。だからそのことを咎めたりはしない…"


"…え…それじゃあ…っ…"


期待に満ちた笑顔を見せたカイとは反対にキュリオの顔がみるみる険しくなっていく。


"…もう二人とも子供ではない。その近すぎる距離が私を不安にさせるのは…わかるね?"


"…っ…"


やんわりと明言を避けた王はその身を翻すと、早々に立ち去ってしまったのだった。


いつしかのキュリオとのやりとりを思い出していたカイだが、その事をアオイは知らない。

いきなり突き放してしまえば、この優しい姫は間違いなく傷ついてしまうだろう。

そう自分に言い訳しながら…彼は行き場のない想いをずっと持て余している。


(…アオイ様…っ…)


そしていつの間にか女性らしい体つきになってしまったアオイの体を抱きしめると、キュリオの心配していた理由が明確な答えを導き出してしまう。


「……」


(悪い事しちゃった…やっぱりカイ具合悪いんだ…)


ぎゅっと彼の胸元を握りしめ、申し訳なさでいっぱいの胸を押し当てると…


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