狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
前夜Ⅶ
「…アオイ、さっ…」
「…お願い、あたためさせて…ごめんねカイ…」
「…っ!!」
あられもない方向に思考が流れ、可愛らしいアオイの声に耳を傾けていたカイの体はどんどん強張っていったのだった―――。
そして翌日―――…。
「おはようございますキュリオ様」
幾分ラフな服に着替えたキュリオは日が昇って間もないにも関わらず、すでに完璧に身だしなみを整え、ティーカップを傾けながらソファに腰をおろしていた。
「あぁ、おはようアレス」
目の前で深く頭を下げた若い魔導師に頷きながら言葉を交わすキュリオ。
窓から流れる清らかな風がキュリオの長い銀の髪を揺らすと露になった透き通る白い肌を今度は朝日が優しく撫でていく。
どの角度からも非の打ちどころのないこの美しい王は、その正体を隠しながら今日も"アラン"としての役割を果たそうとしていた。
「いよいよですね、あ…アオイ様はもう少し寝かせて差し上げたほうがよろしいでしょうか?」
「…集合時間にはもう少し余裕がある。しかし…朝食をとらずに出かけるのはやはりよくないな…」
「そうですね、だいぶ遅くまでご準備されていたようなので寝不足でなければ良いのですが…」
カップに口を付けようとしていたキュリオの手が止まり、わずかに鋭くなった視線がアレスへと向けられる。
「…手伝っていたのは誰だ?」
「はい、カイのはずですが…そういえば珍しくまだ姿を見ていないような…」
「…今すぐ二人を起こせ。カイは私の前に連れて来なさい」