狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】

狂気の渦

「ああっ?俺は小僧じゃねぇよ!!…お前らなんかより…っ…」


とまで言いかけて急に口を噤んでしまった。

ヴァンパイアのハーフである彼は悠久の民より遥かに寿命が長く、例え百の年月を越えたとしてもその姿は若く美しいままなのだ。



「どうした…?その先が言えぬのなら私が言ってやろうか?」



意味深な言葉と視線を投げつけたアランと別の声が重なった。



"ヴァンパイアのハーフ…ですか"



"うるせぇっ!!好きでこんな体に生まれたわけじゃねぇんだよっ!!"



"出来そこないの屑とは…あなたのような方の事をいうのでしょうね"



"…っ黙りやがれっっ!!"



一瞬の間に流れた見覚えのある映像。



「……?」



(なんだ…今の…)



いつのものとも区別のつかない複雑な記憶が入り乱れ…シュウの思考を困惑させていく。



(…誰だ?こいつ…)



懸命に思い出そうとすればするほど…記憶の中の男に靄がかかり、彼の氷のように鋭い瞳だけがやけに鮮明に浮かび上がってくる。


すると、おもむろに顔を近づけてきたアランが耳元で囁いた。



『…穢れた血のせいで人にもなれぬ哀れな鬼へ終止符を打ってやるのも私の務めだ…』



アオイはまだ知らない。

彼女を取り巻く環境や選択によって…よりキュリオの思考が狂気の渦へと落ちていくことを―――。



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