狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
Ⅶ―ⅷ 不穏な空気
「冥王とはマダラ様のことですか…?」
目を伏せたキュリオは"そうだね"と呟いた―――
「それは一体どういう…」
アレスが聞き返そうとしたとき扉がノックされ、お茶を手に戻ってきた女官と侍女が勢いよく室内へとなだれ込んできた。
「お嬢様っっ!!」
「…え、え?」
驚くアレスは彼女らの気迫に圧倒され、一歩、二歩と後ずさりする。そしてキュリオの元へと一目散に駆け寄った彼女たちの背中で、徐々に王の姿が見えなくなっていく。
「よかった…っお嬢様っ!!」
涙を浮かべる侍女らに囲まれながら、お嬢様と呼ばれた赤子は笑顔を向けた。
「きゃぁっ」
そして喜ぶような声をあげ、ケラケラと笑っている。
少しの間、侍女たちに赤子を預けたキュリオは体をずらしてアレスとガーラントの視界に戻ってきた。
「話の途中ですまないね、マダラの話だったかな?」