狂気の王と永遠の愛(接吻)を　【第一部　センスイ編収録版】

王の知らぬ大地

「美味しかったね、ここのご飯」


「だねー！なんか得しちゃった気分♪」


「皆は何食ったんだろうな」


「アタシたちよりは普通のものでしょうなぁ♪」


よほど満足したのかミキは店を出た直後からずっと鼻歌をうたっている。


「アラン先生、ホテルってこの近くなんですよね？」


幸いな事に料亭から先はクラス行動にうつるらしく、女教師たちに群がられずに済んだ一行は群れの最後尾をのんびりついて行く。

中でも…アランファンの生徒たちは激しくぼやいていたが、馬車の到着が遅れた事とアランがそれ以上口を開かなかったために大きな騒ぎにならなかったのだ。


「そうだね…あぁ、ホテルというより旅館と呼ばれる館(やかた)造りの古風な建物のようだよ」


「旅館…」


またも聞き慣れない言葉にアオイの胸は高まっていく。


「さっすが王立学園！小旅行なんていっても学習の面では抜け目ないねー」


若き生徒たちに色々な文化を肌で感じ、学んでもらおうという考え方はとても素晴らしいものがある。

伊達に王立学園の名を語っているわけではないようだ。


「アラン先生はこのあたりに詳しいんですか？」


見慣れぬ土地に瞳を輝かせるアオイが可愛い。

本来ならば悠久の大地を彼女ともに渡り歩いてみたい…という願望のあるアランには残念な気持ちが大きかった。


「私もここに来たのは初めてだ…開拓されたばかりの土地かと思っていたのだが…先程の料亭は古くから存在していたものらしい」



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