狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
攫われたアオイ
「……」
アオイはアランの腕の中、冷たい夜風を頬に感じながら月夜に浮かぶ彼の横顔を見つめている。
「あの…アラン先生、そろそろ戻らないと…」
「……」
アオイを横抱きにしたまま連なる建物の屋根を軽々と飛び越えていくアラン。
着地するたびにマントがしっとりと体に張り付くが、すぐに次へと踏み込む彼の躍動に合わせ、まるで黒い翼のようにそれが広がる。
(どうしよう…だいぶ遠くに来てしまったみたい…どうするおつもりなのかしら…)
彼の腕から辺りを見回すと、灯りが集中していた街並みはすでに抜けており…かと言って、悠久の城を目指しているわけでもなさそうな方角だった。
そして、いつまでも無言のままの彼に戸惑いながらアオイはもう一度言葉を紡ぐ。
(もう人目もないし、アラン先生って呼ばなくてもいいよね…?)
「お父様…」
すると…ようやく彼の瞳が降りてきて…
「すまない…アオイの了承も得ずに連れ出してしまった」
「え?」
まさかそんな事を言われると思っていなかったアオイは驚きに目を丸くしている。
(いつものお父様だわ…)
「…は、はい…正直驚きましたけど、良かった…これも演劇の一環なんですね?」
ほっと安堵の息を零したアオイは、自分の取り越し苦労だった事に胸を撫で下ろした。
アオイはアランの腕の中、冷たい夜風を頬に感じながら月夜に浮かぶ彼の横顔を見つめている。
「あの…アラン先生、そろそろ戻らないと…」
「……」
アオイを横抱きにしたまま連なる建物の屋根を軽々と飛び越えていくアラン。
着地するたびにマントがしっとりと体に張り付くが、すぐに次へと踏み込む彼の躍動に合わせ、まるで黒い翼のようにそれが広がる。
(どうしよう…だいぶ遠くに来てしまったみたい…どうするおつもりなのかしら…)
彼の腕から辺りを見回すと、灯りが集中していた街並みはすでに抜けており…かと言って、悠久の城を目指しているわけでもなさそうな方角だった。
そして、いつまでも無言のままの彼に戸惑いながらアオイはもう一度言葉を紡ぐ。
(もう人目もないし、アラン先生って呼ばなくてもいいよね…?)
「お父様…」
すると…ようやく彼の瞳が降りてきて…
「すまない…アオイの了承も得ずに連れ出してしまった」
「え?」
まさかそんな事を言われると思っていなかったアオイは驚きに目を丸くしている。
(いつものお父様だわ…)
「…は、はい…正直驚きましたけど、良かった…これも演劇の一環なんですね?」
ほっと安堵の息を零したアオイは、自分の取り越し苦労だった事に胸を撫で下ろした。