狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
違和感
やけにそわそわと視線を泳がせた男に違和感を覚える。
「…自分の持ち場を離れるなんて…誰の許可を得て来たの?」
「そ、そりゃあっ…店主の…」
「どなたを迎えに?お待ちして迎える側の私たちが出向くなんて…よほどのお客様なのでしょうね?」
「へ、へい…すぐそこの、ご新規様なんですがねっ…」
なぜか急ぎ足で遠ざかろうとする男に…
「…もっとまともな嘘をつきなさい…」
うんざりするようにため息をついた女の長い髪が風に靡いてさらさらと揺れている。
「…この程度の長屋に住んでいる者たちが夜のあの店に入る事すら叶わないのは一目瞭然…」
「それとも…店を離れた理由が言えないだけかしら?」