狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
Ⅷ―ⅰ 先輩魔導師
アレスはワクワクする気持ちを抑えられず気持ちばかりが高揚していくが、立場上今回はただついて行くだけの存在となるだろうことは理解していた。
(キュリオ様の加護の灯(ともしび)…私はまだ見たことがない。噂では銀色の光のようなものだと聞いたことがある)
灯を掲げる役になれないだろうか、とそんなことを考えながら歩いていると研究室の前に辿りついた。古木で作られた巨大な扉の前に立つと、この悠久の歴史が一心に感じられる気がする。太古から存在していた魔導師たち。どれほどの魔導師たちがこの部屋を出入りしたのだろう。もとは金色と思われる扉の金具も黒ずんでしまっているが、それがまた風情があり、痛んでいないのは素材が良く作りがしっかりしている為だということは容易に想像できた。
アレスは深呼吸し、控えめに扉をノックすると静かな廊下によく響いた。
『はい』
すぐに返事があり、数秒後わずかに開いた扉の向こうからは探していた魔導師の彼が顔を覗かせる。
「あれ?君は最近入った…アレス?だったかな」