狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】

ガウンの使い道Ⅱ

そしていつもの光景はこうだ。


読書をはじめてしばらくもしないうちに…トン…と心地良い重みがキュリオの二の腕を直撃し…


"おや…"


キュリオは読みかけの分厚い本にしおりを挟むと、今度はアオイの手元から薄めの書物をスルリと抜き取った。

そしてこのままベッドに運ぶかと思いきや…自分にもたれかかる彼女の体を自身の膝の上に横たわらせ、幸せな重みとぬくもりに頬を緩ませているキュリオがいる。

つまり彼の羽織っているガウンはこの時の為にあるといっても過言ではない。


いっその事、アオイのクローゼットをこの部屋に置いてはどうかとキュリオは提案したが…


"それはなりませんキュリオ様!!
姫様はお年頃のレディですわっ!!お着替えの最中に殿方がいらっしゃるなんてっ!キュリオ様が許しても私たちが許せません!!"


と、古株の女官たちの理解を得る事はできなかったのだ。


子を持ったことのないキュリオは何が普通なのかわからない。

ただ、心のままにアオイを愛せば愛するほどに…まわりの批判が強くなっている気もする。


だからこそ…


皆が寝静まり、人の目を気にせずにいられるこの時間がたまらなく愛おしいのだ。
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