狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
見慣れない顔
諦めて踵を返す彼女に先程の母親が声をかけてきた。
「おや?べっぴんさんだね!あんたどこから来たんだい?」
「…都の方からです」
「だと思ったよ!ってこんだけ垢抜けした顔してりゃ誰でもわかるかっ」
ほんの少し煤に汚れた顔を手の甲で拭きながら女が近づいてくる。
ふくよかな女の顔は人の好さがにじみ出ており、冷やかしというよりも好奇心に駆られて声をかけたのがわかる。
すると女は彼女の美しい着物や装飾に目を輝かせながら一点を見つめたまま微笑んだ。
「特にその簪(かんざし)似合ってるねぇ!大事な人からの贈り物なんだろ?」
「…えぇ…」
一瞬見せた寂しそうな顔の"大和撫子"。すると…
「…あんたもしかして…いや、悪い事聞いちまったようだね。ここらはちょいと物騒になっちまったから早くお帰り」
死んだ恋人からの贈り物だと思い込んでいる女の考えはあながち外れてはいない。
「…物騒?何か心当たりでも?」
怪訝な顔をする彼女に女が耳打ちするように近づいた。
「なんでも見かけない顔の男がまるで下見でもするように裏路地をうろついてるって話さ!最近放火魔の話があっただろ?そいつじゃないかってもっぱらの噂だよ!」
(裏路地か…)
「…ありがとう貴方も気を付けて」
「え?あぁ…」
(一人じゃ広すぎるな…誰か連れてくるべきだった)
「おや?べっぴんさんだね!あんたどこから来たんだい?」
「…都の方からです」
「だと思ったよ!ってこんだけ垢抜けした顔してりゃ誰でもわかるかっ」
ほんの少し煤に汚れた顔を手の甲で拭きながら女が近づいてくる。
ふくよかな女の顔は人の好さがにじみ出ており、冷やかしというよりも好奇心に駆られて声をかけたのがわかる。
すると女は彼女の美しい着物や装飾に目を輝かせながら一点を見つめたまま微笑んだ。
「特にその簪(かんざし)似合ってるねぇ!大事な人からの贈り物なんだろ?」
「…えぇ…」
一瞬見せた寂しそうな顔の"大和撫子"。すると…
「…あんたもしかして…いや、悪い事聞いちまったようだね。ここらはちょいと物騒になっちまったから早くお帰り」
死んだ恋人からの贈り物だと思い込んでいる女の考えはあながち外れてはいない。
「…物騒?何か心当たりでも?」
怪訝な顔をする彼女に女が耳打ちするように近づいた。
「なんでも見かけない顔の男がまるで下見でもするように裏路地をうろついてるって話さ!最近放火魔の話があっただろ?そいつじゃないかってもっぱらの噂だよ!」
(裏路地か…)
「…ありがとう貴方も気を付けて」
「え?あぁ…」
(一人じゃ広すぎるな…誰か連れてくるべきだった)