狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
黒い燃えかす
入り組んだこの辺りでは妖しい影を探すにもいちいち角を曲がる必要があった。
彼女は着物の裾を持ち上げると急ぎ足で民家の裏へとまわっていく。
すると…
(藁の焼けるにおい…)
その匂いのもとはすぐわかった。
一筋の白い煙が立ち上がっていたからだ。
(このあたりは一度見回った場所…あの家の裏庭か)
民家の生垣を背にしながら女は息をひそめる。
(…人の気配はないが用心するべきだな)
手にした番傘を強く握りしめながらゆっくりと近づいた。
―――パチパチ…
しかし…期待していた光景ではなく、小さなたき火のあとの黒く燻った燃えかすが散らばっているのみだった。
(…なんだこれは…)
女は安心のような期待はずれのような複雑な気持ちを抱えたまましゃがみ、燃え残った藁を手に取るとまわりを見渡す。
「灯りのない家の裏庭に…なぜ…」
ゆっくりと番傘を置いて膝をついた女はあまりにも不自然な状況に首を傾げている。
放火魔の仕業だとすれば建物に火を点けるに違いない。
しかし、たった一握り程度の藁で何をしようというのか…。
立ち上がりながらざわつく胸の音に嫌な予感が拭えない。
(おかしい…まるでこれは…)
彼女は着物の裾を持ち上げると急ぎ足で民家の裏へとまわっていく。
すると…
(藁の焼けるにおい…)
その匂いのもとはすぐわかった。
一筋の白い煙が立ち上がっていたからだ。
(このあたりは一度見回った場所…あの家の裏庭か)
民家の生垣を背にしながら女は息をひそめる。
(…人の気配はないが用心するべきだな)
手にした番傘を強く握りしめながらゆっくりと近づいた。
―――パチパチ…
しかし…期待していた光景ではなく、小さなたき火のあとの黒く燻った燃えかすが散らばっているのみだった。
(…なんだこれは…)
女は安心のような期待はずれのような複雑な気持ちを抱えたまましゃがみ、燃え残った藁を手に取るとまわりを見渡す。
「灯りのない家の裏庭に…なぜ…」
ゆっくりと番傘を置いて膝をついた女はあまりにも不自然な状況に首を傾げている。
放火魔の仕業だとすれば建物に火を点けるに違いない。
しかし、たった一握り程度の藁で何をしようというのか…。
立ち上がりながらざわつく胸の音に嫌な予感が拭えない。
(おかしい…まるでこれは…)