狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
Ⅷ―ⅲ 教官・ブラスト
石造りのゲートをくぐると、鍛錬用の防具に身を包んだ剣士たちが大声をあげて剣の打ち合いをしている。ぶつかる金属音と火花が散ると、彼らの本気さが伝わってきた。
「ほぉ、皆の者やっておるな?相変わらず剣士は血の気が多くて何よりじゃ」
感心したようにガーラントが顎鬚をなでると、その姿に気が付いた一人の体格の良い男が小走りにやってきた。
「これはガーラント殿!いつも書物に囲まれているあなたがなぜこのようなところにっ!?」
「もしや…っ!とうとう剣を…っっ!?」
興奮し、日に焼けた顔に笑顔を弾けさせる中年の彼は若い剣士たちの指導を任された教官・ブラスト。血気盛んな彼に圧倒されながらもガーラントは、
「むぅ…。おぬしもキュリオ様と同じようなことを…儂はそんなに書物に囲まれてばかりおるかのぉ…。それに今更、剣を習いとは思わんよ」
とため息をつき、"年を考えろ"とばかりの恨めしそうな表情を向けた。
「いえいえっ!魔術を極めたあなたなら剣術だっていけるはずです!!」
ガハハと笑う彼は以前からガーラントに剣術を覚えさせようと必死で、彼曰く"術を極めた者ならばさらにその先があるはず!"とその信念は昔から揺らがないのだった。
「まぁのぉ…。おぬしの言いたい事はわかるが…儂はいかんせん…」
とガーラントが言葉を続けようとすると…
「隙ありぃぃいぃぃーーーーーっっっ!!!」
の少年の声とともに、ブラストの脳天を木刀が直撃するのだった―――