狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】

召集Ⅰ

栗毛の馬を駆る悠久の戦士や魔導師の群れが規則正しい列を成しながら西の地を目指して走る。

その先頭を行くのは教官のブラストと魔導師アレスだ。

キュリオから緊急の命令が下されると即座に集結したアレス率いる魔導師らとブラスト率いる戦士たちが王のもとへと急いだ。


(大規模な火災…?それほど大きなものがなぜ…)


アレスの胸を一抹の不安がよぎる。


(…民の住む村や街には必ず悠久の兵士たちが常駐しているはず…)


彼らは民を守るために異変があればすぐに駆けつけ、被害が拡大する前に何らかの対応を行うようになっているのだ。

以前アオイがティーダと共に下校していたのを兵士が目撃したのもそういう体制が整っていたからである。


「どうしたアレス!考え事してて落馬したなんて格好つかないぞ!?」


相変わらず健康的に日焼けしたブラストが真横にならぶアレスに激を飛ばす。


「ブラスト教官…すみません」


非常事態にも関わらず、頭の良い彼は浮かび上がった疑問を払拭できずに戸惑っている。


「…なんか気になる事でもあるのか?」


「……」


剣士の教官であるブラストはアレスに付きっきりで彼に指導していたわけではない。しかし、"使者"として共に行動してからというもの、何かとアレスを気にかけてくれるため彼の異変はすぐにわかる。


「俺でよければ話してみろ」


(アレスの事だ…大抵の疑問は的を得ている)


「はい…申し訳ありません」


「よし、前に出るぞ」


魔導師の彼が頷いたのを見届けたブラストは馬の腹を蹴り、わずかに愛馬を加速させて後ろに続く戦士たちとの距離をとった。


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