狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
仙水の想いⅠ
その頃、足元に清らかな水の流れる仙水の部屋では―――。
力無く壁に寄りかかる仙水と窓辺に立つ九条の姿が暗闇の中に浮かび上がる。
「……」
「……」
先程から口を開かない二人だが、詮索してこない九条の様子を見るからに仙水の身に何が起こったのかすでに把握しているようだった。
「…彼女は…生きていました」
「……」
ようやく口火を切った仙水に九条は窓の外を眺めたまま無言を貫いた。
「…可愛らしい浴衣を着て…どんな夢を見ていたのでしょう…ね。正直…彼女が現れるまでここが夢の世界だという事に気づきませんでした」
まだ掠れ声の仙水は俯いたまま顔を上げる事なく言葉を発する。
すると…
「現れたのは和の国か」
「えぇ…炎が上がり、駆け付けた先にアオイさんがいました…」
「……」
彼女の名を口にするのはまだ辛いであろう仙水にようやく振り返った九条。
「お前が記憶のないあの娘に別れを告げたところで何か変わるとは思えない」
「…彼女が変わる必要はありません。あの言葉は私への戒めなのですから…」
「……」
(…大和…わざとあの娘と仙水を引き合わせたな…)
「それに…悠久のセシエル王と戦いになれば私も無事で済むかどうかわかりません。そしてこのままアオイさんと繋がり続ければキュリオ殿との衝突は避けられない。それでは彼女が悲しむ…」
「あの娘がお前を思い出したらどうする」