狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】

見逃せないものⅡ

そして入口で待機していた教官・ブラストへすれ違い様に命じる。


「…アオイが目覚めても部屋から出さないでくれ」


「ハッ!畏まりました!!」


そのままブラストと目も合わさず通り過ぎようとするキュリオの心が荒れていることは一目瞭然だったが、そうさせたのは彼の弟子でもあるカイが絡んでいることを知っていたブラストは…


「…っお待ち下さいキュリオ様!カイが…出過ぎた真似を…っ誠に申し訳ございませんでしたっっ」


「……」


深く頭を下げるブラストを背にキュリオは振り返らない。無言を貫いた美しい銀髪の王は足を止めることなく階段を下りていってしまった。


「キュリオ様…」


キュリオの信頼を得てアオイの世話役となったはずの弟子をブラストは誇りに思っていた。

しかし、アオイ付きを外された今…


「カイのやつ…姫様だけは駄目だとあれほど忠告してやったのに…っ…」


早くからカイの恋心に気づいていたブラストはそっと見守ろうとしたところで驚愕した。よりにもよってキュリオが溺愛する一人娘のアオイとあらば話は別だからだ。

父親以上の愛を注ぎ、片時も離れようとしないキュリオを見ればわかる。


もし…愛する娘を手に入れようとする者が現れれば、たちまち敵と見なされ顔を合せる事すら叶わなくなるだろう。


既にその段階へと進んでしまったカイがこの先どうなるかわからない。


「キュリオ様のお心を静められるのは…もはやアオイ姫様しかおられないんだろうな…」


重厚な扉の向こうで眠る姫君へとわずかな望みを繋ごうとするブラストだった―――。


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