狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
見逃せないものⅢ
そして…下の階へと降りたキュリオの眼差しは鋭く、一室を睨むように見つめながら突き進んでいく。
扉の入り口に立つ二人の男が深く一礼しキュリオを出迎えると…
開いた扉の向こうで年若い魔導師と剣士が膝に額が付きそうなほどに体を折り曲げて立っていた。
「……」
キュリオは二人を一瞥し、無言のまま正面の椅子に座る。
重苦しい空気を纏ったキュリオは彼らに口を開くことを許さず、己の内なる苛立ちをしずめるように静かに目を閉じた。
そのあまりに長い沈黙に耐えられず口を開いたのはカイだった。
「…キュリオ様申し訳…ございませんでした」
「……」
剣士の声に薄く開かれたキュリオの眼差しが怖い。
まるで不協和音を耳にし、神経に触ったかのようにカイを睨んでいる。
「…アオイが館を飛び出した理由は想像がつく。言い聞かせたつもりだったが…引き留められなかった責任は私にある」
そこでキュリオは小さく息を吐くと背もたれに寄りかかり、長い足を組みながら肘掛に片肘を預けた。
いつも寛大な心で何事も器用にこなす彼が五百年以上変わらず<慈悲の王>で在り続けること事態途方もない時間の長さだが、これほどまでに心が乱されるのはここ数十年に限ってのことだ。よって、かけがえのない愛を手にしたキュリオがそれまでの彼のように振舞えない原因は明らかにアオイにあることをキュリオは気づいているのだろうか?
「そしてお前たちが見つける前に何があったかが問題だが…」
そこまで言うとキュリオの視線がカイにのみ向けられた。
「…カイ」
「アオイが目覚めたら別れの挨拶をしてきなさい。金輪際(こんりんざい)顔を合わせることも叶わないと思え」
扉の入り口に立つ二人の男が深く一礼しキュリオを出迎えると…
開いた扉の向こうで年若い魔導師と剣士が膝に額が付きそうなほどに体を折り曲げて立っていた。
「……」
キュリオは二人を一瞥し、無言のまま正面の椅子に座る。
重苦しい空気を纏ったキュリオは彼らに口を開くことを許さず、己の内なる苛立ちをしずめるように静かに目を閉じた。
そのあまりに長い沈黙に耐えられず口を開いたのはカイだった。
「…キュリオ様申し訳…ございませんでした」
「……」
剣士の声に薄く開かれたキュリオの眼差しが怖い。
まるで不協和音を耳にし、神経に触ったかのようにカイを睨んでいる。
「…アオイが館を飛び出した理由は想像がつく。言い聞かせたつもりだったが…引き留められなかった責任は私にある」
そこでキュリオは小さく息を吐くと背もたれに寄りかかり、長い足を組みながら肘掛に片肘を預けた。
いつも寛大な心で何事も器用にこなす彼が五百年以上変わらず<慈悲の王>で在り続けること事態途方もない時間の長さだが、これほどまでに心が乱されるのはここ数十年に限ってのことだ。よって、かけがえのない愛を手にしたキュリオがそれまでの彼のように振舞えない原因は明らかにアオイにあることをキュリオは気づいているのだろうか?
「そしてお前たちが見つける前に何があったかが問題だが…」
そこまで言うとキュリオの視線がカイにのみ向けられた。
「…カイ」
「アオイが目覚めたら別れの挨拶をしてきなさい。金輪際(こんりんざい)顔を合わせることも叶わないと思え」