狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】

交わるはずのない歯車

巨大な大理石に覆われた湯殿に湯気は立っておらず、彼が水浴びと言っていたその文字通りマダラはその身を冷水の中にさらしていた。


「……」


彼はとてつもなく広い浴槽の淵に背を預けながら胸を反らすように後ろで両肘をついている。

そんなマダラもまた…ティーダが想いを寄せる"アオイ"という少女に興味を抱き、幾度となく彼女の夢を覗いては首を傾げる日々が続いていた。


「…何かが足りない」


大理石以外何もない天井を見つめていたその瞳は閉じて、マダラは夢の人物たちを思い返してみた。



(対立する二つの力と潜む闇…やつらの力の源はその内に秘めたわずかな希望か、圧倒的な絶望か…)



(…問題はそこではない。交わるはずのない歯車がなぜ出会った…?)



(欠落しているのはなんだ…?)



「………」



やがて何を感じたかピクリと動き出した彼の手は再び水の中に沈められている大鎌を握りしめた。





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