狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
Ⅸ―ⅰ 整った準備
やがてガーラントは巨大な扉の前で立ち止まり、扉をノックする。
「キュリオ様、ガーラントでございます」
彼がそう名乗ると内側から透き通った男性の声が響いた。
『ああ、入りなさい』
後方にいるカイは待ちきれないのか列からはみ出し顔を覗かせている。
―――その頃広間では…
遅い朝食を済ませたキュリオは赤ん坊を膝に座らせながらソファで紅茶を飲んでいた。
(もうそろそろいい頃だろうか?)
そんなことを考えていると、外側から待ち人の声がかかった。
『キュリオ様、ガーラントでございます』
「ああ、入りなさい」
キュリオは彼に入るよう返事を返し、膝の上にいる小さな彼女に微笑みかけた。
「ここで待っていてくれるかい?私は少し用事があるから行ってくるよ」
彼女の両脇に手を入れ、膝からおろしソファへと寄りかからせる。体が冷えてしまわぬようストールで優しく体を包みなおした。
理解してかるかどうかわからないが、相変わらず天使ような笑みを浮かべてキュリオを見つめ返している。
「いい子だね。ではまたあとで」
キュリオは幼子の頭をひと撫ですると、少し離れた広間の入口へと歩いて行った。