狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
Ⅸ―ⅱ 整った準備
一同のなかでキュリオと顔を合せたことがないのは唯一カイだけだった。噂に聞く王は剣の腕前、魔術ともに人の域を超越し、現在五人の王の中で第二位の立場にいるという。
五百歳を超えているという彼の姿を想像し、カイの頭の中ではひどい妄想がくりひろげられていた。
扉を開けたガーラントが日の光の降り注ぐ明るい広間を中へと進む。
続けてブラスト教官、その後ろにテトラらが歩き…アレスとカイは並んで最後尾をついていく。
足元を見ると自分の姿がうつってしまうほど美しく磨かれた大理石。天井は高く、中でも目を引くのは水晶を散りばめたような見事なシャンデリア。そしてバランスよく配置された高貴な家具たちが趣味の良さをあらわしていた。
「なんだこの部屋…すっげぇな…」
「う、うん…」
カイとアレスはキョロキョロあたりを見回しながら感嘆のため息を零している。
やがて足元に柔らかい感触をおぼえ、目を向けてみると部屋の三分の一を占めるほどの大きな真紅の絨毯が眼下に広がっていた。広間には光りが溢れ、それらを取り込むガラス窓の数も膨大で数えようとすれば目が回りそうだ。
「大変お待たせいたしましたキュリオ様」
ガーラントが恭しく一礼すると先程の透き通った若い男の声が返ってくる。