狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
Ⅸ―ⅲ 整った準備
「ガーラント、急がせてすまなかった」
気遣うような柔らかな物言いに、ハッとしたカイが正面にいる背の高い男の顔を見つめた。
「皆、よく集まってくれたね」
ガーラントの後ろに立つ数人の剣士と魔導師をみてキュリオが穏やかに微笑んだ。その微笑みは春のそよ風のようにあたたかく、五百歳を超えているはずなのに二十代半ばにしか見えぬ…輝くような美貌を放つ男だった。
「…え?あれが王様なのか…?」
ボソリと呟いたカイは信じられぬものを見るような目で彼を凝視している。気付いたアレスに肘でつつかれ、"失礼のないようにね"と小声でささやかれた。
「お、おう…!」
気合を入れるようにぐっと拳を握りしめ背筋を伸ばす。すると微笑んでいたキュリオの瞳が後方にいるカイをとらえた。
「君は…」
見慣れぬ少年の顔にはところどころ傷があり、小さいながらに勇敢さを秘めた真っ直ぐな瞳をキュリオは見逃さない。
「私はキュリオ。君は剣士だね。名前を教えてくれるかな?」