狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
Ⅸ―ⅳ 癒しの力
「お、俺!見習い剣士のカイ!!」
「カイ…いい名前だね」
目線を合わせるようにかがんだ彼の髪が絹糸のようにさらさらと揺れている。そのわずかな動きさえ優雅で美しく気品に溢れていた。
(王様…俺のこと見習いだって嫌な顔すると思ってた…)
差し出されたキュリオの白く美しい手を見つめ、カイはゆっくりした動作で己の手を近づけていった。そしてその距離がゼロになると…
しっかり握りしめられた互いの手。
すると異変を感じたカイはキョロキョロと己の体を見つめた。細胞のひとつひとつが活性化するような、さらに心までもが穏やかに癒されていくような不思議な感覚におそわれる。
「なんだ…これ…」
よくみてみるとカイの体は淡く光輝いており、剣の鍛錬でついたいくつもの傷が綺麗になくなっている事に気が付く。
カイはキュリオと手を握りしめたまま腕や足、そして顔は見えないため空いたほうの手でペタペタと触っている。
「傷がない…」
驚いているカイをみてブラストがニカリと笑った。