狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
Ⅸ―ⅸ 出発
ガーラントはやれやれと顎鬚をなで、ブラストに「まーまー!」となだめられている。過保護なガーラントに、積極的なブラスト。対照的な二人も互いを補う上でとてもよい組み合わせかもしれない。
そしてガーラントは大切にしまっておいたキュリオの書簡を胸元から取り出す。家臣のひとりが近づき、美しい装飾がついた箱の蓋をあけ大魔導師はその中へ書簡をおさめた。
「キュリオ様、書簡はブラストに持たせましょう。よいですかな?」
「ああ、構わないよ」
キュリオが頷いたことを確認し、ガーラントはブラストへその箱を託した。
「はっ!確かにこのブラストお受け取りいたしましたっ!!」
深く一礼し、アレスはキュリオから加護の灯を受け取る。見た目ほど重くはなく小さなアレスでも道中の負担にはならなそうだった。
「これが加護の灯…」
キュリオの羽が放つ神秘的な輝きにアレスは魅入られている。いつまでも眺めていたいような、そんな不思議な感覚に囚われていた。
アレスが加護の灯を受け取るとブラストが声をあげた。
「ではキュリオ様っ!!これより使者五名!出発いたします!!」
「よろしく頼んだよ」
微笑みを絶やさぬキュリオと、やや心配そうな目を向けているガーラントらに見送られ一行は国の端にある外門まで馬で移動するのだった。