薫子様、一大事でございます!
北見さんは一瞬だけ私を見て、すぐに男性へと視線を戻した。
「まだ見つからないのか」
「あ、いや……。おかげさまで何とか」
私を気にしながらボソボソと小さく呟く。
「それは良かったよ。いやぁ、あの後もどうしたかなって、ちょっと気になってたんだよね」
「ははっ、すみません」
どうもどうも、なんて頭を下げながら、北見さんが私の背中を押して歩き出そうとした。
な、なになに?
なんだか慌ててるようだけど……?
肩越しに、二人を交互に見比べる。
「とにかくよかったな、兄ちゃん。じゃ」
男性が去ると、北見さんは小さく息を吐いた。