薫子様、一大事でございます!
「作るって約束したのに、ごめんなさい」
「大丈夫でございますよ」
「銀さんは、ほんっとカコちゃんに甘いな」
「そんなつもりはございませんが……甘いですか? そうですかねぇ」
首を傾げながら、おたまを回す。
「しかも、これって市販のルーじゃないですよね?」
「おやっ、よくお分かりになりましたね、北見さん」
「そうなの? 滝山」
「ええ、実はカレー作りは得意分野でございまして」
それじゃ、今まで私が食べてきた滝山のカレーは、全て一から作ったものだったの?
スパイスを何種類も配合して?
「薫子様に市販のルーでカレーをお出ししたことは一度もございません。ま、たいした味ではございませんがね」
謙遜しながらも、自信たっぷりに笑う。