薫子様、一大事でございます!
北見さんは、帽子で乱れた私の髪の毛まで、ご丁寧に整えてくれた。
「……ありがとうございます」
「さて、行くとしますか」
「え? 北見さん、行くんですか?」
この前の様子だと、あとは知らないぞっていう感じだったから。
てっきり、この件はノータッチなのかと。
「銀さんとカコちゃんの二人連れより、俺とカコちゃんの方が自然じゃないか? 恋人同士に振舞えば」
――“恋人同士”って。
最後の一言に、意味もなくドキンと胸が高鳴る。
「さようですか。私としましても、北見さんが薫子様とご一緒された方が安心ではございますが……よろしいんですか?」
「他に何かやることがあるわけでもないですしね。銀さんは留守番を頼みます。何かあったら連絡を入れますよ」